お知らせ
2012/08/31(金)
お知らせ
忘れ物(下)
素晴らしい塾生と大勢の人々に支えられて、
塾はこれまで順調に成長してきた。
同時に、私もなんとか人並みの生活を手に
入れることができた。
にもかかわらず、心のどこかに満たされぬ
思いがあるのはどうしてだろう。
思えば、東京での社会人生活は貧乏そのも
のだった。貧乏から抜け出そうとして、失敗
ばかりしていた。
しかし、夢があった。毎年桜の木を眺めては
「今年こそ」とこぶしを握りしめていた。
他人から貧乏人と言われても、アホと言われ
ても、目標めがけて燃えるような充実感を
何度も味わってきた。
今はどうか。
将来の夢を語る卒塾生に現実の厳しさをとう
とうと語り、悦に浸ってはいないか。
英単語がなかなか覚えられない塾生に「○○
大学は無理だ。素直に△大学にしておいたら」
と、冷たく言い放ってはいまいか。
フツーの生活を手に入れたことで、視線の位
置も「下から上」ではなく、「上から下」に
なってしまったのではないか。
学生だった私に「安定」と「フツーの生活」
を説いた理事のように。
仕事やプライベートでアクションを起こそう
とするたびに、チャレンジを促す自分の前に
現状維持を訴えるもう一人の自分が立ちはだ
かるのを、感じる。
塾の運営が安定すればするほど、現状の生活
や人間関係、職業倫理を順守するよう説く
もう一人の自分の存在が日増しに大きくなっ
ていく。
でもそんな生活にかつての燃えるような充実
感はない。
どうやら、私はフツーの生活と引き換えに夢と
チャレンジする心をどこかに忘れて来てしま
ったらしい。
かつて理事が言ったような人生も、一つの
答えだろう。
でも、やっぱり自分には似合わないと思う。