お知らせ
2012/06/13(水)
お知らせ
職人の手
塾のななめ向かいに、ラーメンで有名な
「朱華園」さんがある。長年地元に愛され、
かつ週末には観光客が列を作る有名店だ。
このたび町内会のお祭りの当番として、お店
のご主人とご一緒させてもらう機会に恵まれ
た。
ご主人は非常に物腰が柔らかく、しかも人生
経験豊富な方だった。打ち合わせのためお店
に伺うたびにラーメンのみならず自動車、異
文化体験など豊富なエピソードを笑顔で話し
てくださった。そんな人柄に、ふたまわり以
上年下の私などは一発で魅せられてしまった。
ご主人のあまりの穏やかさに、私はつい「お
店は後進に任せ、ご自身は経営に注力されて
いるのだろう」と勘違いしてしまった。そし
て「厨房には今も立たれるのですか」と冷や
汗ものの質問をしたことがある。
しかし、ご主人は柔和な笑顔のまま、答えの
代わりに両手を私にかざして見せてくださっ
た。
両手とも、指が関節のところで大きく曲がっ
ている・・・・・
丼をもつ左手の指は第1関節のところで折れ
曲がり、麺をあげる右手の指も中指が第1関
節と第2関節のところでS字状に曲がってい
た。
その指は40年近く最前線(=厨房)に立ち
続けるご主人の人並み外れた努力とプライ
ドを雄弁に物語っていた。この手を見せら
れたら、どんな立派な「経営論」も「集客
術」も瞬時に霞んでしまうだろう。
「友人は優雅な商売だな、と笑うけどね」
手をおろしながら笑うご主人に、逆に凄味
を感じずにはいられなかった。
私のすらりとまっすぐ伸びた指に、せめて
ペンダコができる日は果たしてくるのだろ
うか。